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【お知らせ】

タレントイメージと法

 最近,来店型保険ショップが増えているようで,各代理店とも顧客獲得に必死です。最近たまたま見たTVCMにかつてのアイドルタレント薬丸裕英・秀美夫妻が出演していました。
 客として保険ショップを訪れた薬丸夫妻が,速水もこみち扮する保険コンサルタントに保険の見直しを相談したところ,もこみちから「今の保険プランですと怪我は手厚いんですが,万一の時はちょっと。アイドル時代のままですね。」と言われ,薬丸夫妻が夫婦の会話をしながら保険の見直しを考えるという内容です。
 このCMのターゲット層は,正に私の属する世代である40代でしょう。20~30年前,薬丸裕英がシブガキ隊というジャニーズアイドル,妻秀美が石川秀美というアイドル歌手であったという事実,及び二人がいわゆる「できちゃった婚」をしたカップルであるという事実を知っている世代であり,「万一の時はちょっと。」と言われてドキッとする「死を意識し始める」世代であるということです。「アイドル時代のままですね。」とのもこみちの台詞で笑い,その直後に自分もこの二人と同様に年齢を重ねて来たのだと自覚し,保険の見直しを考える40代の視聴者こそが潜在顧客なのでしょう。ユーモアがあって面白く,広告として上手いと思います。
 ところで,このCMの例でもお分かりの通り,薬丸夫妻のようにキャリアを重ねてきたタレントさんのもつ肖像権は,一般人の肖像権とは異なる財産権的な性格を有します。このCMではターゲットとなる40代視聴者を保険ショップでの保険の見直しを考えさせるのは,まさに薬丸夫妻のタレントイメージであり,このタレントイメージが有する顧客吸引力の持つ財産的価値の側面は「パブリシティ権」と呼ばれています。最高裁平成24年2月2日付判決(いわゆる「ピンクレティ事件」判決)は,「肖像等を無断で使用する行為は,①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し,③肖像等を商品等の広告として使用するなど,専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に,パブリシティ権を侵害するものとして,不法行為法上違法となると解するのが相当である。」と判示して,パブリシティ権を人格権に由来する法的権利として明確に認め,これを侵害する行為が不法行為となる要件を明示しました。
 薬丸夫妻の同世代顧客吸引力は相当に強力だと考えられますから,パブリシティ権の評価額も相当であろうと改めて思い至った次第です。

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